大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和25年(う)511号 判決

論旨は、原判決は審判の範囲外の事項につき、擅に審理判決した違法があるから破棄さるべきであるというのである。よつて、按ずるに、公訴の効力は、事件が同一であるかぎり、その全部に及ぶから、事実上事件の一部分だけについて公訴の提起があつても、その効力は当然に事件の全部に及び、したがつて、起訴状の摘示にもれた部分も審判の対象となつているものと解すべきである。さすれば、数個の行為が、法律上一罪を構成する牽連犯、想像的併合罪、包括的一罪及び連続犯のような場合は、事件は同一であるから、例えば、単一の被告人の一個の行為が物価統制令違反罪と臨時物資需給調整法違反罪に触れる想像的併合罪の場合において、起訴状には、物価統制令違反の事実だけについての訴因及び罰条を掲げて公訴の提起があつても、その被告人の行為が、他面臨時物資需給調整法にも違反するときには、その公訴の効力は、臨時物資需給調整法違反の事実にも及び、したがつて、同事実も物価統制令違反の事実と同時に審判の対象となつたものとみて、その両事実について審理判決しても、何等公訴事実の同一性を害せず、違法ではないとみるべきであり、しかして、かような場合において、刑事訴訟法第三一二条により、訴因及び罰条の追加、変更手続を要するか、どうかは、被告人の攻撃、防禦に実質的な不利益を生ずるおそれがあるか、どうかにより、決定さるべきである。それで、今本件につき、記録を調査するに、原判示第二の(三)及び(四)掲記の事実に対し、起訴状の摘示する訴因及び罰条に徴すれば、本件公訴は、なるほど、所論のとおり、被告人の物価統制令違反の事実についてのみ提起されているところ、原判決は、被告人の所為は、起訴状記載のとおり一面物価統制令に違反するとともに、他面臨時物資需給調整法にも違反するものとし、その両事実について審理し、いわゆる一個の行為にして数個の罪名に触れる想像的併合罪であると認定したことが明らかであり、しかも、その認定にあつては、訴因及び罰条の追加、変更の手続はとられていないことも明らかである。しかし、原判決が被告人の右所為を処断するについては、刑法第五四条第一項前後、第一〇条を適用し、結局重い起訴状記載の物価統制令違反罪の一罪とし、同令所定の刑によつていることが認められるから、かような場合は、別に訴因及び罰条の追加、変更の手続をとらないでも、被告人の攻撃防禦には、何等実質的な不利益を生ずるおそれはないとみるのが相当である。さすれば、前説示するところにより、原判決には所論のような違法は存在しないものといわざるを得ない。論旨は、独自の見解のもとに原判決を非難するもので、採用することを得ない。

(註。本件は量刑不当により破棄自判)

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